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さて、「カリオストロ=ヴォー州説」

の説明は前ページまでに尽くした。

では、他の場所がカリオストロ公国である可能性はないのだろうか。

さらに物語で描かれている建物はどんな建築をモデルとしているのだろうか。

このページでは、それらを検証してみたい。

「カリオストロの城」冒頭の場面

モナコ公国

 

欧州の仏語圏で、ただ1つの公国と言えばモナコ公国である。

「仏語圏の公国」と言えば、

誰もが思い浮かべるのがモナコ公国ではないだろうか。

しかし、物語の冒頭にはいきなりモナコ公国のカジノが登場する。

ルパン三世たちはここから車で移動して、

数日かけてカリオストロ公国に入国している。

この「国営カジノ」の電飾看板「MONACO」の文字が、

日本のパチンコ屋の店名のようなものでないのであれば

(国営カジノに他国の名を冠することは考えにくいが)

「カリオストロ公国=モナコ公国説」

はあっさりと否定されてしまうことになるだろう。

アヌシー城 Chateau d'Annecy

南東フランス

 

フランス国内のスイスにほど近い地方にも、

いくつか湖がある。

 

Lac d'Annecy アヌシー湖

Lac du Bourget ブルジェ湖

 

などがそれにあたる。

いずれもスイスから40〜50kmの距離であり、

近辺に古城も存在する。

イタリアもほど近い距離にあり、

当然ながら仏語圏であるため、

れらは候補地として適格であろう。

やや標高が低く

周囲の景観がスイスアルプスを背景にするとは言い難い点と

湖水面積が狭い点が難点とは言える。

「カリオストロの城」最後の場面

 

物語の最後の風景に、大型の客船のように見える船が映っている所から、

最後の景色は海ではないか、との疑問もわいて来る。

スイス近辺の仏語圏で、標高が高く海への距離が近い湖というと、

強いて言えば、フランスの

Lac de Sainte- Croix サンテ・クロワ湖

Lac de Castillon カシティヨン湖

などであろうか。

が、筆者が実際に赴いた感じでは、これらは周囲には穀倉地帯が広がり、

スイス・アルプスとは景色の趣が全く異質である。

候補としてはなかなか厳しいと言わざるを得ない。

Vevey 周辺のレマン湖

レマン湖の周遊船

レマン湖

 

海のように見えるラスト・シーンの水面を見て想起させられるのは、

スイス・ヴォー州の Lac Lemanレマン湖である。

前ページ記載のシヨン城が浮かぶレマン湖は

スイス仏語圏を代表する湖であり、

その面積は580㎢、

横浜市がすっぽりと収まってしまう程広大な湖である。

 

湖を周遊する観光船はかなりの大きさであるので、

最後の場面に見える大型船は、

「レマン湖の周遊船である」と解釈することができる。

そのような解釈をすれば、

「最後の場面の水面は海ではないか?」

という疑問を

「スイス・ヴォー州説」

の矛盾点とする指摘への反論となるはずである。

しかし、これは確証のない推論なので真偽の判断は読者に委ねたい。

 

また、筆者の住む街からほど近くに Vevey という街がある。

喜劇王チャップリンが最晩年を過ごしたことで知られ、

街の東側の丘陵斜面に作られたブドウの段々畑が

世界遺産に登録されているこの街を、

筆者は何度となく訪れているが、

の街を見下ろすよう走る高速道路から見た夏のレマン湖は、

映画の最後の場面と酷似している、

と言うことも書き添えておきたい。

↑ サンレーオ城

サン・レーオ

 

実在のカリオストロ伯爵が最晩年を過ごしたのは、

サンマリノ共和国の西側、

イタリアのSan Leo サン・レーオと言う街であった。

Alessandro di Cagliostro アレッサンドロ・ディ・カリオストロ

本名 Giuseppe Balsamo ジュゼッペ・バルサモ

自称、貴族であるが、

実際には上流階級に潜り込む詐欺師であったようだ。

 

彼が獄死した場所、イタリアの 街 San Leo サン・レーオを

「カリオストロのモデル」と公言するサイトは多い。

Wikipediaのような権威あるサイトでも、

「カリオストロの城」を検索すると、

「イタリアのサン・レーオがモデルとなった」

旨の情報が記載されている。

しかしこれは、本ページで筆者が唱えている論以上の暴論である。

 

イタリアのサン・レーオをカリオストロ公国のモデルとするのは、

周囲の景観

言語

湖水

標高

などの点から、かなり苦しい論であると言わざるを得ない。

大公家

 

大公邸のモデルとされるのは、パリ北西約100km に位置する Jumiéges ジュミエージ修道院である。

「フランスで最も感嘆すべき廃墟」

考古学者ロベール・ド・ラステリー(Robert de Lasteyrie)にそう言わしめたこの建物は、

三角形の屋根の跡、柱の形状などに大公家の廃墟と類似点が多く、

確かに「大公家のモデル」と判断するに充分な趣がある。

カリオストロ大公の館跡

↑ ジュミエージ修道院跡 

城の造形

 

カリオストロ城の造形や配色のモデルになったと考えられる建築物もいくつか紹介しておきたい。

南西ドイツ、

バイエルン地方の

Neuschwanstein 

ノイシュバンシュタイン城

は、屋根と壁面の色のコンビネーションや、凹凸の多い壁面のデザインなど、

カリオストロ城との共通点が多い。

 

またこの城を築城した「メルヘン王」

ルートヴィヒ2世の、

廃位から原因不明の水死へ至る劇的な人生はカリオストロ家の物語を想起させるとも言える。

水に囲まれた中世建築と言えば、

フランス北西部ノルマンディー地方の世界遺産、

Mont-Saint-Michel

モン・サン・ミッシェル修道院

も外せないであろう。

 

最初の建築以降、

500年にもわたり増改築を重ねたという造りの複雑さや、

塔と城壁の下、水面近くの狭い場所に城下町が広がる点、橋を渡って敷地内に至る点など、

こちらもカリオストロ城と共通点は多い。

↑ モン・サン・ミシェルの仰望 

 カリオストロ城の仰望 

これら数々の欧州建築の美を重ね合わせて描かれたのが

「カリオストロの城」なのだと考えると

映画そのものの楽しみ方が、より深くなると考えている。

本サイトに最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました!

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