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Neighboring Swiss ?

スイスに暮らして10数年の筆者が毎日目にしている景色。

そんな視点から「カリオストロの城」に出て来る風景は、

スイス・アルプスの山並みそのもである、と言うのが、偽らざる実感である。

その様な観点から、筆者の立てた一つ目の仮説が、

「カリオストロ公国はスイスの周辺にある小国である」

というものである。

<カリオストロ公国は、ヨーロッパの山岳部に位置し、人口3500、世界最小の国連加盟国である。中世の一公国が、そのまま独立を保持して来た珍しい例で、カリオストロ家は西欧貴族の中でも、もっとも古い血筋を誇っている。

カリオストロ家は16世紀に大公家と伯爵家の二つに分かれ現在に至った。> 

宮崎駿監督による設定構想

カリオストロ公国のモデルとしてしばしば挙げられるのが、

「リヒテンシュタイン公国」である。

左の図はスイスの全土を示したものであるが、

その東側に位置し、

スイスとオーストリアに囲まれた独立小国家が

「リヒテンシュタイン公国」である。

人口3万4000はカリオストロ公国の10倍にあたるが、

リヒテンシュタイン公が君主として治める立憲君主制の小国家と言う点からも、

「カリオストロ公国」のモデルになったことはほぼ間違いない。

マイエンフェルトの風景

と言うのも、

「ルパン三世 カリオストロの城」の製作に入る約5年前、

宮崎駿監督はスイスを訪れているからである。

「アルプスの少女ハイジ」のロケハン(ロケーション・ハンティング=撮影などに適切な場所を探すこと、と言う意味の和製英語)取材のための旅であった。

 

 

写真左はマイエンフェルト中心街の噴水広場。

写真右は「アルプスの少女 ハイジ」に登場する街の風景。

その他にも、「ハイジ」に登場する風景には、

「ロケハン取材」の成果があちこちに現れている。

 

「アルプスの少女 ハイジ」第一話より

そして、宮崎監督ロケハンの一行が訪れたハイジの故郷マイエンフェルトと、

冒頭で紹介した小国リヒテンシュタインとは、

車で約30分の距離にある。

宮崎一行がリヒテンシュタインにも赴いたかどうかは定かではないが、

少なくともこの時代の宮崎監督が頭の中に思い描く欧州の景色と言えば、

マイエンフェルトやリヒテンシュタイン周辺の

スイス・アルプスであったはずである。

 

現在ほど手軽に海外に行ける時代ではなかった1970年代、

アニメーション作品製作のためにヨーロッパでロケハンを行なうことなど、

かなり異例の出来事だったとされている。

(余談ではあるが、当時の欧州行き航空路は現在とは大きく異なる。

冷戦中の東側諸国上空を、

西側諸国の航空機が通過することは許されていなかったため、

例えば東京から欧州へ向かうには、

成田から米国アラスカ州アンカレッジを経由し、

北極周りで西ヨーロッパに向かうのが普通であった。

現在の約倍の航空距離・移動時間を要する旅であった)

 

カリオストロの城が公開された1979年、宮崎監督は38歳。

スタジオ・ジブリ創設の6年前であり、

本作は宮崎監督の劇場公開作品のデビュー作である。

 

これらのことからも、

監督をはじめとした制作者が頻繁に欧州へ赴いていたとは考えにくく、

宮崎監督の胸に強く刻まていた欧州の風景とは、

スイスとその周辺の風景であった、と考えられる。つまり

「カリオストロの城」に描かれているのは、スイス・アルプスであった

はずである。

 リヒテンシュタインのファドゥーツ城

カリオストロ城

↑ 二つの城の背景は酷似している

また、リヒテンシュタイン公国の主な産業には、

観光の他に、高い技術で知られる切手がある。

スイスの時計職人の技術にも共通するが、

長く厳しい冬に資源の少ない小国家が生き抜くために、

室内で黙々と技術を磨いて来た歴史がなせる技なのかも知れない。

 

ともあれ、カリオストロ公国のニセ札の技術は、

「かつて本物以上と言われた」とルパン三世を言わしめるほどの高さを誇っている。

 

印刷の技術で資源のない小国が独立を貫いて来た、

と言う点から、

リヒテンシュタインとカリオストロの両公国は産業の特徴に共通点がある

と言える。

↑ リヒテンシュタインの切手

↑ カリオストロのニセ札

カリオストロ公国の国旗

このページでの結論として、

カリオストロ公国のモデルは

リヒテンシュタイン公国である

 

としたい。

が、ここで言うのは、あくまで「モデル」であり、

カリオストロ公国とリヒテンシュタイン公国には、

同一視することができない

大きな問題

がある。

それは、何か?
次のページで明らかにしたい。

リヒテンシュタイン公国の国旗

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